東京電力パワーグリット

進化するブレーカー・分電盤~今話題の感震ブレーカーや高機能分電盤を徹底解説~

ご家庭にある分電盤。
普段目立たないものですが、分電盤の中にある各種ブレーカーは、私たちが安心して生活するために安全に電気をコントロールしてくれる大切なものです。
ブレーカーには、それぞれ重要な役割(感電から命を守ったり、電気の使いすぎによる電線を守ったり、大地震後の通電火災を防止したり等)を担っています。
今回は、時代とともに進化してきたブレーカーや、生活をより安全に便利にしてくれる高機能分電盤について、徹底解説いたします。

分電盤
1.ヒューズ交換が必要な安全器

主に昭和の時代、現在のようなつまみで電気の入・切の操作ができる安全ブレーカー(配線用遮断器)が普及するまでは、「安全器」という白い磁器製の容器の中にヒューズが入っているものが主流でした。

安全器は、ご家庭の電線を保護するために欠かせないものですが、ヒューズが切れると交換が必要でした。

安全器
1-1. 安全器の仕組み

安全器で、どのように電線を保護するのか解説します。
そもそも電線には流せる電気の大きさが決まっており(太ければ大きく、細ければ小さい)、その電気の大きさを超えたまま電気を使い続けると、電線が過熱し「火災」につながるおそれがあります。
つまり、そうならないように電気の使い過ぎやショート(短絡)などが起こったとき、安全器のヒューズが切れて電気の流れを止めることで危険な状態を回避する仕組みになっています。

1-2.ヒューズが切れたらどうする?

安全器のヒューズが切れると、新しいヒューズに交換をしなければ電気は使用できません。
安全器のヒューズはドライバーを用いて交換しなければなりませんので、大変手間がかかります。また、夜であれば部屋の中が真っ暗の中での取替えとなりますし、手元に予備のヒューズがなければすぐに電気を使用することできません。

なお、ヒューズのアンペア数は、一般的に15アンペア(1,500ワット分)ですので、同時に使える家電製品のワット数もそれほど大きくはありませんでした。

2.つまみで入切できる安全ブレーカー(配線用遮断器)

現在では安全器に代わり、ヒューズ交換が不要な安全ブレーカー(配線用遮断器)が主流になっています。
電気の使いすぎにより安全ブレーカー(配線用遮断器)が落ちて「切」になったときには、つまみを「入」にするだけで再び電気を使用することができます。

ただし、使いすぎの場合には、同時に使うアンペア数を減らすために一部の機器を止める必要があります。
また、ショート(短絡)した場合には、ショートしたコードや機器をコンセントから取り外すなど、原因を取り除く必要があります。

なお、安全ブレーカー(配線用遮断器)のアンペア数は、一般的に20アンペア(2,000ワット分)ですので、安全器と比べると多くの家電製品が同時に使用できます。

2-1.安全ブレーカー(配線用遮断器)の種類

多くの方は、下の写真のような黒くて前面につまみのついた安全ブレーカー(配線用遮断器)が複数設置してある分電盤をご覧になったことがあると思います。

安全ブレーカー(配線用遮断器)

安全ブレーカー(配線用遮断器)の例

2000年代以降は、下の写真のように横幅が小さい安全ブレーカー(配線用遮断器)が設置されたコンパクト分電盤が主流となっており、リフォームなどにより古くなった分電盤を取り替える場合などには、このような分電盤へ取り替えられるようになりました。

コンパクト配線用遮断器

写真の右側に複数並んでいる小さいブレーカーが現在の安全ブレーカー(配線用遮断器)

3.漏電・感電事故を防ぐ漏電ブレーカー

次に漏電ブレーカーについてご紹介いたします。

漏電ブレーカー

3-1. 漏電ブレーカーの役割

漏電保護

家の中の電気配線や家電製品が万が一漏電したとき、その漏電をすばやく感知して自動的に電気を止める(遮断する)のが漏電ブレーカー(漏電遮断器)です。
漏電による火災や感電事故を未然に防止する役割があります。

中性線欠相保護

住宅の電気配線の方式は、単相2線式100Vと単相3線式100V/200Vの2種類があります。
分電盤に接続されている電線が2本(白・黒)の場合は、「単相2線式100V配線」、電線が3本(赤・白・黒)の場合は、「単相3線式100V/200V配線」といいます。

単相3線式100V/200V配線では、IHクッキングヒーターや大型のエアコンといった200Vの家電製品が使えますので、現在の住宅では、単相3線式100V/200V配線が主流になっています。

ただし、単相3線式配線は真ん中の中性線(白相)が断線したり、接続箇所の接触が悪くなると、電圧が不安定となり異常電圧が発生するおそれがあります。

中性線欠相による異常電圧

異常電圧が発生すると定格電圧100Vの家電製品が故障し、場合によっては数十万円の被害が発生することがありますので、単相3線式のご家庭は中性線欠相保護機能付き漏電ブレーカーの設置や定期的な取替をおすすめします。

単3中性線欠相保護機能付き漏電ブレーカー

上の写真のように漏電ブレーカーに「単3中性線欠相保護付」と表示がされています。

3-2.漏電ブレーカーのメンテナンス

テストボタンによる動作確認

漏電ブレーカーは、年1~2回テストボタンを押して動作するかどうか確認しましょう。(テストボタンは、灰色や赤色のボタンです。)
なお、テストの際には漏電ブレーカーのつまみが落ちて「切」になり電気が消えますのでご注意ください。
また、まれにつまみが「入」にならなくなってしまうことがあります。
そんな時には一度、つまみを一番下まで下げてから「入」にしてみてください。
それでも「入」にならない場合は、故障しているおそれがありますので、電気工事店等の電気のプロに点検を依頼してください。
(東京電力パワーグリッドでも停電時の安全点検や漏電ブレーカーの取替工事を承ります。詳しくはこちら。)

定期的な取替

漏電ブレーカーの交換推奨時期は使用開始後13~15年と言われています。
長期間の使用で経年劣化することで、ブレーカーが誤作動してしまい、思わぬ停電を引き起こすこともあります。
また、端子ねじが長年の振動によりゆるみ、接触不良により過熱し焦げてしまうこともあります。

交換推奨時期を超えて使用することで、不具合や故障のリスクが高まりますので、定期的な取替をおすすめします。
もしも新築してから15年以上一度もブレーカーの取替をしたことがない場合には、取替をおすすめします。

4.大地震後の通電火災に備える感震ブレーカー

ここ数年、政府も設置を勧奨しているのが感震ブレーカーです。
東日本大震災における本震による火災のうち原因が特定されたものの過半数が電気関係の出火でした。
大きな地震が起こったときに心配されるのが電気火災ですが、それを未然に防止してくれるものです。

参考:内閣府「大規模地震時の電気火災の発生抑制に関する検討会」

4-1.感震ブレーカーの役割

感震ブレーカーは、大地震時に使用していた機器(特に電気ヒーターなどの熱を発生する機器)や、重量物が倒れて傷ついたコードなどへの通電を止めることで、再び電気が送電された時の通電火災を防止する役割があります。

感震ブレーカーは、震度5強以上の大きな地震を感知すると数分後(一般的には3分後)に自動的に漏電ブレーカーを「切」にしますので、夜間に地震が発生したとしても避難するまでは明かりを確保することができますので安心です。(生命の維持に直結するような医療用機器を設置している場合、平時から停電に対処できるようバッテリー等を備えておきましょう。)

感震ブレーカーを設置するにあたっての留意点は、経済産業省が詳しく周知していますので、設置をご検討の方は以下のリンク先をあわせてご覧ください。

参考:経済産業省「感震ブレーカーの普及啓発」

なお、多くの家にはまだ感震ブレーカーが設置されていない状況ですので、感震ブレーカーの設置がない場合は、大地震で避難する際にはブレーカーを「切」にしてから離宅するようにしましょう。

4-2.感震ブレーカーの種類

感震ブレーカーには、分電盤の空き回路スペースに設置するものや、漏電ブレーカー一体型、感震コンセントといった種類がありますので、それぞれ紹介いたします。

空き回路スペースに設置する感震ブレーカー

2-1で紹介したようなコンパクト分電盤の空き回路スペースに設置するタイプは、空き回路スペースがあれば分電盤を取り替えるような大がかりな工事がいりませんので比較的手軽に設置することができます。

空き回路スペースがあれば、おすすめのタイプです。

空き回路スペースに設置する感震ブレーカー

空き回路スペースに設置するタイプの感震ブレーカー例

空き回路スペースへの設置例

空き回路スペースへの感震ブレーカー設置例

漏電ブレーカー一体型(感震機能付き漏電ブレーカー)

コンパクト分電盤ではない従来タイプの分電盤の場合、分電盤が古くなってきていることが予想されますので、分電盤ごと取り替えて感震ブレーカー付きの分電盤へ変更することをおすすめしますが、既存の分電盤をそのまま使用したいというニーズもあります。

そのような場合、漏電ブレーカーのみ取り替えることにより設置できるタイプもあります。

感震機能付き漏電ブレーカーは、既存の漏電ブレーカーと同サイズで設置できるタイプや、アンペアブレーカースペースに設置できるタイプのものなどありますので、電気工事店等のプロが既存分電盤の形により選定します。

感震機能付き漏電ブレーカーの例

感震機能付き漏電ブレーカーの例1(下部に感震ブレーカーを内蔵)

感震機能付き漏電ブレーカーの例

感震機能付き漏電ブレーカーの例2(左側に感震ブレーカーが一体化)

上の写真は、単相3線式100V/200V配線専用のものですが、単相2線式100V配線にも対応できる感震機能付き漏電ブレーカーもございますので、詳しくは電気工事店にご相談ください。
(東京電力パワーグリッドでも見積もりや設置工事のご相談を承ります。詳しくはこちら。)

感震コンセント

大地震が発生した際、アイロンや電気ストーブ、熱帯魚のヒーターなど、熱を発する機器を即時に切りたいという場合におすすめなのが感震コンセントです。

感震コンセントは震度5強以上の地震が発生した際に電気を「即時」に止めますので、万が一、熱を発する家電製品の近くに可燃物があったとしても安心です。

5.進化を続ける高機能分電盤

最後に進化を続ける高機能分電盤について紹介します。

5-1.過電流警報装置付き分電盤

電気を一度に使いすぎて、ブレーカーが落ちてしまった経験はありませんか?
そういった電気の使いすぎ(過電流)を警報でお知らせしてくれるのが過電流警報装置付き分電盤です。

あらかじめ設定したアンペアを超えると、お知らせしてくれるので、ブレーカーが落ちる前に使用している家電製品を減らすことができます。
こまめに電気を消すことにつながりますので、省エネにも役立ちます。

また、ピークカット機能付きのものを選べば、使いすぎの際に自動的に指定した家電製品を止めることもできます。

5-2.避雷器付き分電盤

雷が発生した際に家電製品が壊れた経験をお持ちの方はいませんか?
近くに落ちた雷が電線やアース線を伝わって住宅内に流れ込み、家電製品を故障させてしまうことがあります。

そのような場合に家電製品を保護してくれるのが避雷器付き分電盤です。

特に北関東は全国でも有数の落雷が多い地域ですので、避雷器付き分電盤にしておくと安心です。(全国の年間雷雨日数分布は以下のリンク先に掲載があります。)

参考:日本配線システム工業会「高機能住宅用分電盤」

5-3.感震機能付き分電盤

上記4で説明した感震ブレーカーがあらかじめ設置された分電盤です。
大地震後の通電火災を予防するため、分電盤更新の際には感震機能付き分電盤をおすすめします。

なお、自治体によっては感震ブレーカーや感震機能付き分電盤の設置に対して補助制度がある市区町村があります。
設置前にそういった制度の有無を確認しておくと少しお得に設置できるかもしれません。
補助制度の有無および、補助額・対象世帯数は自治体により異なりますので、詳しくはお住まいの市区町村にお問い合わせください。

感震機能付き分電盤の例

感震機能付き分電盤の例(右下の回路スペースに感震ブレーカーが設置されている)

5-4.HEMS対応分電盤

HEMSとは「Home Energy Management System」(ホーム エネルギー マネジメント システム)の略で、住宅で使用するエネルギーを可視化し管理し、エネルギーの節約や機器の最適制御に役立つものです。
そういったHEMSに対応した高機能分電盤があります。

具体的には、家の中で使用している家電製品などの電気の使用量を見る(どれだけのエネルギーをいつ・どこで・何に使用しているのか確認できる)ことができたり、その機器の最適稼働を制御(家庭内の機器を一括してコントロールしたり自動的にエネルギー使用量を最適化)することができたりします。

さらには、インターネットと分電盤をつなぎ、外出先からスマートフォン等でお風呂のお湯はり、電動シャッターの開閉、エアコンの稼働、床暖房や照明の入・切など、家電製品の操作をすることが可能なタイプもあります。

6.まとめ

ご紹介したブレーカーや分電盤はほんの一例ですが、昔のヒューズ交換を必要とするものから、電気の使いすぎ、漏電、避雷、感震などの保護機能やお知らせ機能を搭載したものや、生活を便利にしてくれる高機能分電盤など、時代とともに安全性、利便性が向上し私たちの生活を守り、豊かにしてくれるものに進化しています。

これからも、どんなブレーカーや分電盤が登場するか楽しみですね。

東京電力パワーグリッドではお客さまが電気でお困りのことや、みてもらいたいことなど、ご家庭の電気安全のご相談にお応えするコンサルトサービスも実施しています。
当コラムで紹介したブレーカーや住宅用分電盤の取替工事も承っておりますのでお気軽にご相談ください。

  • 電気設備の点検をしてほしい
  • 漏電していないか心配なのでみてほしい
  • プラグやコードの正しい使い方を教えてほしい
  • ブレーカーやコンセント・スイッチを取り替えてほしい
  • 高機能住宅用分電盤に取り替えてほしい

こんな時には、お客さまの屋内配線などを東京電力パワーグリッドが測定器を使って診断します。お気軽にご相談ください。
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