東京電力パワーグリット

太陽光発電普及拡大の取り組みとメンテナンス

2021年10月22日に地球温暖化対策計画として、内閣による意思決定の場で議決された第6次エネルギー基本計画では、2030年度までに温室効果ガスを2013年度比で46%の削減、さらには50%の高みを目指すことが表明されました。
また、この目標の実現に向けて、温室効果ガスを排出しない脱炭素エネルギーである再生可能エネルギ―の主力電源化を徹底するとともに、最大限の導入を促すことが示されました。
そこで、ここでは再生可能エネルギーのうち、太陽光発電の普及拡大に向けた国内の取り組みと、太陽光発電導入後のメンテナンスについてご紹介していきたいと思います。
※温室効果ガスとは、CO2、メタン、N20(一酸化二窒素)、フロンガスのこと。 

1.住宅太陽光発電の普及の歴史

1-1 再生可能エネルギー普及検討のきっかけ

1973年に起きた第一次オイルショックをきっかけに、石油だけに頼らないエネルギーの長期的な安定供給の確保を目指す「サンシャイン計画」が当時の通商産業省(現・経済産業省)主導のもと進められました。この検討の対象となったのが、太陽光発電、地熱発電、水素エネルギー、石炭の液化・ガス化です。

1-2 再生可能エネルギー普及拡大の取り組み

1980年に「ソーラーシステム普及促進融資制度」が創設され、住宅にソーラーシステムを設置する際に、低金利で融資を受けることができました。この制度は1996年まで続き、融資件数は累計27万4000件にのぼり一般家庭への普及を促しました。
また、1992年には電力会社による電力の自主的な買取の取り組みとして「太陽光発電による余剰電力の販売価格での買電制度」が開始しました。これは、太陽光発電の余剰電力を一般家庭向けの電力販売価格と同じ値段で買い取りする制度で、これにより太陽光発電設置にかかったコストを早期に回収できる可能性ができたため、太陽光普及促進の一助となりました。

2003年には、政府が電力会社に対して定められた目標年までに一定割合以上の再生可能エネルギー発電の導入を義務づけたRPS制度が施行され、その後2009年には「太陽光発電の余剰電力買取制度」が開始され、太陽光発電の余剰電力の買い取りが電力会社に義務付けされました。
この買い取りにかかるコストについては電気料金に上乗せすることで、電気利用者に広く負担してもらうことになりました。

2012年には「再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT法)」が導入され太陽光発電に限らず風力、水力、地熱、バイオマスの買い取りも義務化されました。


出典:経済産業省 資源エネルギー庁「再生可能エネルギーの現状と本年度の調達価格等算定委員会について」(平成29年9月)

1-3 再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT法)

2012年から現在も続く制度として、再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT法)があります。
この制度は、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度です。電力会社が買い取る費用の一部を、電気をご利用の皆さまから「賦課金」という形で集め、再生可能エネルギーで発電した電気を売電した発電事業者の方へ支払う仕組みとなります。
※2017年以降は小売電気事業者から送配電事業者へ買い取りが変更になりました。

2.再生可能エネルギー普及拡大の新たな取り組み

脱炭素社会を目指す日本が、再生可能エネルギーのさらなる普及拡大を目指すなかで新たな取り組みを表明しております。ここでは、国から示されている新たな取り組みについて説明していきます。

2-1 2050年カーボンニュートラル

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることを指しており、日本は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにした脱炭素社会を目指しています。
※「排出を全体としてゼロ」というのは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」から、植林、森林管理などによる「吸収量」を差し引いて、合計を実質的にゼロにすること。


出典:経済産業省 資源エネルギー庁「「カーボンニュートラル」ってなんですか?」(前編)~いつ、誰が実現するの?」(2021年2月16日)

東京電力グループとしても、カーボンニュートラルへの挑戦として、「2030年度に販売電力由来のCO2排出量を50%削減」、「2050年にエネルギー供給由来のCO2排出実質ゼロ」の目標を掲げるとともに、再生可能エネルギーや電動車両が広く普及し、より安全で快適なくらしができる社会に向けてお客さま一人ひとりの期待を超える価値をお届けできるように取り組んで参ります。

2-2 FIP制度の導入

FIP制度とは、「フィードインプレミアム(Feed-in Premium)」の略で、太陽光発電では認定容量が1,000kW以上を対象としております。ただし、認定容量50kW以上1,000kW未満は、事業者が希望すればFIP制度の選択が可能でなる制度で、2022年4月から導入されます。


出典:経済産業省 資源エネルギー庁「再生可能エネルギー固定価格買取制度等 ガイドブック 2021年度版」(2021年3月発行)

この制度は「固定価格買取制度(FIT法)」のように、電気を固定価格で買い取るのでは無く、再エネ発電事業者が電力卸市場などで売電したときに、その売電価格に一定のプレミアム(補助額)を上乗せすることで再エネ導入を促進する制度です。

具体的な仕組みは、「固定価格買取制度(FIT法)」では電力会社が再エネ電気を買い取る際の1kWh当たりの単価が決まっておりますが、FIP制度でも「基準価格(FIP価格)」が定められます。
※再エネ電気が効率的に供給される場合に必要な費用の見込み額をベースに諸事情を鑑みて設定される。

あわせて、市場取引によって発電事業者が期待できる収入分である「参照価格」も定められ、市場価格に連動して1か月単位で見直されます。この「基準価格」と「参照価格」の差をプレミアムとして再エネ発電事業者が収入として受け取ることになります。


出典: 経済産業省 資源エネルギー庁「再エネを日本の主力エネルギーに!「FIP制度」が2022年4月スタート」(2021年8月3日)

3.太陽光発電設備のメンテナンス

太陽光発電が普及以降、様々なトラブルが報告されており2017年4月施行の改正FIT法において50kW未満の太陽光発電についてもメンテナンスが義務化されています。
ここでは太陽光発電設備のメンテナンスに関して説明します。

3-1 改正FIT法による認定基準

改正FIT法で新たな新認定制度が創出され、「適切に保守点検及び維持管理するために必要な体制を整備し、実施するものであること」という基準が新たに示されました。
具体的な審査基準は、「保守点検及び維持管理の責任者が明確であること」と「保守点検及び維持管理の計画が明確であること」となっており、この基準を満たすことができないと、認定をうけることができません。
また、旧FIT法で認定取得済みの方も、改正FIT法に基づく事業計画を遵守することが必要となります。

3―2 太陽光発電設備におけるトラブル

太陽光発電設備におけるトラブルと聞くと、太陽光パネル(以下、「太陽光モジュール」という)表面のガラス割れや、鳥のフン、ホコリなどの汚れによって発電量が低下することを想像する方も多いかと思います。それ以外にも、目に見えないトラブルとしては、太陽光モジュール内部回路での断線などによる発電量低下や、パワーコンディショナー本体のトラブルにより運転を自動停止してしまうことなどもあります。

しかし、太陽光発電設備のトラブルで一番気を付けなければいけないことは、発電設備からの火災です。消費者庁・国民生活センターが運営している「事故情報データバンクシステム」により、太陽光発電設備における発煙・火災に関する事故情報を抽出したところ、2017年~2021年の5年間に日本全国において111件もの発生情報がありました。
太陽光発電設備を安心して使用するためにも、車と同じように定期的にメンテナンスをすることが重要です。


出典:消費者庁・国民生活センター「事故情報データバンク」(2022年1月6日検索)データ引用

3-3 メンテナンス方法

FITの認定申請時に計画したとおり、基本的には定期的なメンテナンスを実施することが重要となりますが、その他にもご自身により定期的に発電状況をモニターなどを確認することで発電状況の異常を早期に発見できる可能性もあります。
異常を発見できた場合には、太陽光発電の設置を依頼した施工店やハウスメーカーなどに、点検依頼や修理方法について相談することをお勧めいたします。

4.まとめ

太陽光発電などの再生可能エネルギーの普及はこれからも進んでいきます。
今後、太陽光発電設備の設置や導入を検討している方や、太陽光発電が設置された住宅の購入を検討している方は、購入後のメンテナンスについてもしっかりと確認していただき、太陽光発電をより長く安心してご使用ください。

東京電力では、皆さまが、より安心・快適な生活を送っていただけるようグループ会社と一体となって快適な暮らしのお手伝いを実施しております。電気設備以外にも、水回りなどの暮らし全般に関してご相談やご要望がありましたらいつでも連絡ください。