おすすめのエコキュートは?メリット・デメリット、補助金制度を解説
日々の暮らしの中で「光熱費の削減をしたい」「エコに暮らしたい」という方は多いのではないでしょうか。
以前のコラムで「省エネ家電製品の選び方について」紹介いたしましたが、家庭におけるエネルギー消費の約3割は「給湯」です。
今回は、給湯の省エネルギーに向けて、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)でも多く採用※されている「エコキュート」について、メリット・デメリットや寿命や補助金制度など、気になることを徹底解説いたします。
※ZEHを実現した住戸の6割以上がエコキュートを給湯設備として採用。
(出典:一般社団法人 環境共創イニシアチブ「ネット・ゼロ・エネルギーハウス支援事業調査発表会2019」)
1.エコキュートの概要と普及率
はじめに、エコキュートの概要と普及率について、解説いたします。
エコキュートとは、「自然冷媒ヒートポンプ給湯機」のことで、ヒートポンプユニットと貯湯タンクがセットになっている電気給湯機のひとつです。自然冷媒である二酸化炭素(CO2)を冷媒としたヒートポンプユニットにより、空気中の熱を取り込んで、お湯を沸かし、貯湯タンクでお湯をためておく「高効率給湯機」です。
※出典:一般社団法人 ヒートポンプ・蓄熱センター「エコキュートとは」
「エコキュート」という名称は関西電力の登録商標4575216号であり、市販が開始された2001年に統一愛称として電力会社や給湯機メーカーで使われ始めました。
環境に優しく給湯にかかる光熱費を削減できること等が支持され、累計出荷台数は2022年3月末時点で800万台※を突破しています。
※出典:一般社団法人 日本冷凍空調工業会「家庭用ヒートポンプ給湯機(エコキュート)国内出荷実績」
環境省の2019年度の調査※によると、電気ヒートポンプ給湯機の普及率は、14.8%(戸建て24.4%・集合住宅3.0%)であり、戸建て住宅を中心に普及が進んでいます。
※出典:環境省「家庭部門のCO2排出実態統計調査における主要項目の経年比較及びCO2排出量の変化要因分析(参考資料)表9 」(令和3年3月)
エコキュートは、お湯を使う時に沸かすのではなく、主に夜間にお湯を沸かしてタンクに貯湯し、それを利用するのが特徴ですが、夜間以外であってもお湯が不足しそうな時には自動的に沸き増しをして湯切れを防止します。
貯湯タンクのお湯は使った分だけ給水されるため、いつもお湯や水でタンクが満たされた状態になっています。お湯の温度は使用状況により65~90℃に沸き上げられるため、お湯を使う時には水と混ぜて設定温度で給湯される仕組みですので、タンク容量よりも多くのお湯を使うことができます。
エコキュートの例
2.エコキュートのメリット
2-1.給湯にかかる光熱費を削減できる
エコキュートを導入する最大のメリットは、光熱費が削減できることです。
電気給湯機にはヒーターでお湯を沸かす「電気温水器」がありますが、エコキュートでは空気の熱を集めてお湯を沸かすため、給湯にかかる光熱費が電気温水器に比べ約3分の1になります。
資源エネルギー庁の省エネ性能カタログによると、2022年3月1日現在、エコキュートのエネルギー消費効率は、もっとも効率がよいもので4.2※という数値であり、1の電気から1の熱を出すヒーターと単純比較すると、4.2倍効率がよい(1の電気で4.2の熱を出すことができる)ということになります。
気になる電気代ですが、エコキュート370Lタイプで、エネルギー消費効率4.2の機種では、東京・大阪の外気温度を前提に4人世帯を想定した保温を含む使用湯量の場合、省エネ性能カタログによると、消費電力量は年間1,158kWh※、電気代は年間26,600円※(月平均2,217円)と試算されています。
省エネ性能カタログでは、機種ごとにエネルギー消費効率や年間電気代の目安等を比較できますので、機種選びの参考にしていただけますと幸いです。
※出典:経済産業省 資源エネルギー庁「省エネ性能カタログ電子版」
省エネ性能カタログ記載の電気代は、一定の条件に当てはめて算出したものであり、外気温や使用湯量、電気料金単価にといった各種条件よって異なりますので、1つの参考値として考えていただければと思います。
エコキュートにかかる電気代については、ご契約されている電力会社(小売電気事業者)の電気料金プランにもよりますので、エコキュートを設置する際には最適な料金プランを確認されることをおすすめします。
なお、東京電力パワーグリッドは送配電事業者であり電気の小売事業はしていませんので、恐れ入りますが最適な電気料金プランについてのお問い合わせは、小売電気事業者へご相談ください。
2-2.災害時にはタンクに貯めてあるお湯や水を生活用水として利用できる
災害時には、エコキュートの下の方にある非常用取水栓からタンクに貯めてあるお湯や水を生活用水として利用できます。
熱湯が出る場合がありますので、ご利用の際には、取扱説明書やメーカーが公開しているホームページや動画をよくご覧になって十分に注意してご利用ください。
2-3.ライフスタイルにあわせて色々なタイプや快適・便利機能が付いた機種を選択できる
主なタイプ
• 給湯専用タイプ
蛇口やシャワーから給湯のみできるタイプ。
• セミオートタイプ
給湯に加え、浴槽への自動湯はり、足し湯ができるタイプ。(保温機能はないが高温足し湯をすることでお湯を温めることが可能)
• フルオートタイプ
給湯に加え、自動湯はり、保温、追い焚き、足し湯といった機能がある一般的なタイプ。
• 多機能タイプ
フルオートタイプの給湯機能に加え、温水式床暖房やミストサウナの熱源機としても利用できる多機能タイプ。
• 太陽光発電連携タイプ
太陽光発電の売電価格が買電価格より安い場合には、自家消費した方がお得ですが、太陽光発電連携タイプであれば昼間の沸き増しを増やすことで余剰電力を自家消費し、発電した電気をお得に使えます。
最近では、主に昼間に沸き上げることで、夕方お風呂に入る時間までの貯湯タンクの放熱ロスを最小限に抑えるタイプも販売されています。
• 太陽熱集熱器対応(太陽熱利用)タイプ
太陽の熱でお湯が沸くソーラーシステムとエコキュートを組み合わせたタイプで、太陽と空気の熱を利用するため、給湯にかかる環境負荷をより低減できます。
主な快適・便利機能
• マイクロバブル・ファインバブル機能
浴槽アダプターから微細な泡が出てきて心地よく入浴でき、湯冷めしにくく、肌水分量がアップしてうるおいを保つ効果がある機能。
• 深紫外線による菌の増殖抑制機能
風呂配管を通るお湯に深紫外線を照射することで、浴槽内の菌の増殖を抑え臭い・にごりや、排水溝のぬめりを抑制するため、残り湯を使って洗濯する方にもおすすめの機能。
• 遠隔操作機能
スマートフォンでどこからでも湯はり、沸き上げ休止などの操作ができる機能。
• 水道直圧給湯
貯湯タンク内のお湯の熱を利用して、熱交換器により水道水を瞬間的に温めて給湯するため、水圧が高く3階でもシャワーが使える。
2-4.湯沸かし時に排気ガスや臭いが出ない
電気を利用しているため、ガスや灯油を燃料とした給湯器のように燃焼に伴う排気ガスや臭いは出ません。
また、不完全燃焼や一酸化炭素中毒の心配もありません。
2-5.空気の熱でお湯を沸かすから省エネルギー
エアコンと同じヒートポンプの仕組みを利用して、空気の熱を集めてお湯を沸かしているため省エネルギーです。
再生可能エネルギーというと「太陽光」や「風力」をイメージする方が多いと思いますが、実は「空気の熱」も「エネルギー供給構造高度化法」により再生可能エネルギーと位置づけられています。
2-1でも紹介したとおり、空気の熱を利用することで、1の電気で3倍以上の熱を得ることができ、省エネルギーです。
環境省の調査※によると標準的なエコキュート1台あたりの年間二酸化炭素(CO2)削減量は、約500kg-CO2とされており、一般住宅に導入した場合のCO2排出量は約15%削減されると言われています。
2-6.ヒートアイランド現象の緩和効果もある?
環境省の調査※によると、ヒートアイランド緩和効果については、エコキュートがお湯を沸かす際に空気中から熱を集めるため、特に夏季にはエコキュートが稼動する夜間の屋外気温を低下させる効果があると言われています。
その効果を研究した事例では、明け方の5~6時ころに最大で0.7~1℃程度の気温低下が期待できるとしています。
エアコンの暖房を利用すると室外機から冷たい風が出ますが、エコキュートでは年間を通して湯沸かし中に冷たい風が出ているということになります。
夏場の熱帯夜を少しでも緩和する効果があるという面でも環境に貢献できていると言えます。
※出典:環境省「ヒートアイランド現象による環境影響等に関する調査業務」3.1(4)ヒートポンプ給湯器(2010年3月)
3.エコキュートのデメリット
3-1.湯切れする可能性がある
エコキュートは学習機能により、普段のお湯の使用量をモニターしてお湯を沸かしていますが、突然の来客や普段よりも多くお湯を使ってしまうと湯切れが発生してしまうことがあります。
使用湯量が増えそうな場合は、あらかじめ湯沸かしモードを「たっぷり」や「多め」といった設定に切り替えておくことをおすすめします。
エコキュートは、利用人数に対して小さいタンクを選定してしまうと、追加の沸き増しが増えることになりますので、選定する際には、将来的な利用人数も加味して余裕のあるタンク容量を選ばれることをおすすめします。
3-2.設置場所が必要
エコキュートはヒートポンプユニットと貯湯タンクユニットを設置するため、設置スペースが必要となります。
奥行きが狭い場所に設置できるスリム型や、高さ制限がある場所に設置できるローボディのタンクもありますが、ガス給湯器からエコキュートに変更される場合は、エコキュートが置ける設置スペースがあるか確認することをおすすめします。
3-3.設置場所により運転音が気になる場合がある
エコキュートのヒートポンプユニットの運転音は、40デシベル程度であり、これは閑静な住宅街の昼間や図書館程度の音の大きさです。
ただし、主にお湯を沸かすのが深夜であり、周囲にご迷惑をおかけする可能性もあるため、隣家の寝室や居室の近くを避けるなど設置場所には配慮されることをおすすめします。
3-4.ガス給湯器よりも機器代が高い
エコキュートの機器代は一般的なガス給湯器よりも高価です。
導入費用が気になる方は、初期費用がかからないリース制度を利用するという選択肢もあります。
ガスや灯油の給湯器から変更される場合、光熱費の安さにより、機器代や設置費用の差額分について何年で元を取ることができるか、メーカーのホームページにある光熱費シミュレーションなどを使用し、光熱費を試算されることをおすすめします。
4.エコキュートの寿命
エコキュートの寿命は10~15年程度と言われています。
ガス給湯器や石油給湯器の寿命は約10年と言われていますので、機器代や光熱費など総合的に判断して機器を選択されることをおすすめいたします。
ただし、機器代が高い分、ヒートポンプユニットが故障したときにはそれなりにお金がかかります。
もしも、故障が気になる場合は、販売店やメーカーの延長保証制度や、リース制度を利用することもできますので、あわせて検討してみてはいかがでしょうか。
5.補助金制度について
お住まいの自治体によっては、補助金が出るケースもあります。
エコキュート等にご興味がある方は、少しでもお得に設置するために、まずはお住まいの自治体に確認されることをおすすめします。
なお、補助金は一般的に設置工事着手前の申請が必要であり、自治体の予算額により締め切りになる場合もありますので、ご注意ください。
6.まとめ
今回はエコキュートのメリット・デメリットについて紹介いたしました。
エコキュートは給湯の光熱費削減や防災にも役立ちますので、新築や給湯器買替の際には、候補の1つとして検討する価値があるのではないでしょうか。
このコラムがご自身のライフスタイルにあったエコキュート選びの参考となれば幸いです。
なお、東京電力パワーグリッドでは、お客さまが、より安心・快適な生活を送っていただけるようグループ会社と一体となって快適なくらしのお手伝いを実施しております。
エコキュートや太陽光発電、蓄電池システム等の導入やリースについて、ご相談やご要望がございましたらいつでもご連絡ください。
また、お客さまが電気でお困りのことや、みてもらいたいことなど、ご家庭の電気安全のご相談にお応えするコンサルトサービスも実施しています。
- 電気設備の点検をしてほしい
- 漏電していないか心配なのでみてほしい
- プラグやコードの正しい使い方を教えてほしい
- 焦げたり差し込みのゆるくなったコンセントを取り替えてほしい
- 分電盤やブレーカー、スイッチを取り替えてほしい
こんな時には、お客さまの屋内配線などを東京電力パワーグリッドが測定器を使って診断します。お気軽にご相談ください。
24時間365日受付しております。詳しくはこちら。